僕の人生に大きな影響を与えたこの大会。ざっくりいうと「飲食店サービスパーソン王者決定戦」
3年ぶりの開催という事でしっかり全国大会を観戦してきました。
実は今回、2次審査から4次まで審査員やらせてもらいました。とても良い経験になったのと、皆さんの演技動画をずっと見ているとどんどん感情移入してくるもんですね。
ステージ上で頑張ってる推しを見る感じ、新しかった。
結果から言いますと東京の絶好調てっぺん、泉萌子さんが優勝。審査員特別賞は関西地区の古屋さん。
今までは地区ごと一人から二人づつ全国大会に出場していたので、ぶっちゃけ地区によってレベルの差が出ていてそれもまた一つの醍醐味だったのですが
今回から全エントリー者から上位10名を選出となったので、全員高次元のパフォーマンスを見せてくれました。クオリティの高さは今までで一番だったのでは。
会場は なかのzero小ホール。大きくもなくサーバーの息遣いが聞こえそうなちょうどよい箱ですね。聞けば落語の独演会とかやってる会場らしく納得。
大会自体は集計のトラブルがありましたが、前もって対策も取られていてさすがの運営力を感じました。
良い大会であったために、モヤッとする場面が逆に目立ったな、というのが今回の印象でした。
サーバーのための大会なんだよね?
僕のモヤッとポイントはここに尽きます。
①サーバーより目立とうとする演者
大会の内容は
1、舞台上で3枚の用紙をそれぞれめくって書いてあるお題に対応する『クイック審査』
2、舞台袖で3枚の用紙から一つ選択して、書いてあるシチュエーションでロールプレイングを行う『規定審査』
3、予め与えられたテーマにそって発表する『スピーチ』
の3つ
僕が気になったのは2の規定審査。
規定審査はサーバーの他にお客様役で演者が複数人登場して、シチュエーションにそった演技をしていくわけ。
一番目のサーバーの時、とある演者がアドリブを入れたら多少会場がウケたのがいけなかった。
気を良くしたのか、その後該当演者は何かしら小ネタを入れるように。
当日のMCは某マスオさんのモノマネで有名な芸人さんで、その日もしっかりマスオさんネタを披露していたわけですが
該当演者は舞台上でマスオさん真似をしたりするわけです。ウケ狙いで。
これっておかしいよね。
サーバーは必死に舞台上を店舗としてロールプレイングを行っているので、所謂「メタ的」な行動はノイズにしかならないはず。サーバーとのやり取りの中で結果ウケた、というのなら全く問題ないけれど
真剣にやっている舞台上で、サーバーを差し置いて何やってるの?という感想。
途中で運営側が釘さすだろうな、とおもったら最後までその調子。トップサーバーが集結した大会だったから良かったものの、あれは大会自体を台無しにする可能性があったと僕は考えています。
②手段と目的が違う設問
これも規定審査での話。前述の通り舞台袖で用紙をめくるとシチュエーションというかお題が書かれていて
今回のお題、一枚目は
「目の不自由なお客様」というシチュエーション。
これはあるあるパターンで、過去のサーバーグランプリでも似たようなシチュエーションがあったはず。視覚障害者に対してどこまで寄り添えるか、楽しんでもらうかを考え、行動できるかが問われるやつです。所謂王道シチュエーションで演じきったサーバーも素晴らしかった。
目が不自由なだけで、店を健全に楽しみたいというお客様へこちらも全力でお応えする。あるべき姿だよね。
で、僕が耳を疑ったのは2問目と3問目。
『糖尿病』『認知症』と書かれた用紙。
この用紙出た瞬間会場がざわつきました。
糖尿病のシチュエーションは、おそらく成人の息子と母の二人組で母親が糖尿病。注文のシーンで息子が
「糖尿病なんですよ」とサーバーに伝える。でも母親は久しぶりの外食だからビール飲みたい!あれこれ食べたい!と言うのをどう対応するか。
認知症のシチュエーションは同じく二人組だが、ひたすら母親が何度も食事を注文し「食事をした事を忘れる」というもの。テーブル上を散らかしたりするのを息子がひたすら片付けたりするシーンが延々と続き、会話にならない感じ。
出題意図として、今後高齢化社会になるためこのようなシーンは多くみられるはずであり、前もって対策をとるためにも出題したというものでした。
これってサーバーが責任をもって対応するべきものなのだろうか?というのが率直な感想でした。
店舗で起こった事は全て自分ごとにする、というのが僕の信条だったけど
それは僕が店主だったからなわけで。
「うちでは満足いく対応が出来かねますので、他のお店を探されては?店探しお手伝いします」とかあの舞台上で言えるわけもないでしょうに。
また、シチュエーションとしても
糖尿病を心配している息子という役なら最初から飲食店入ってくる?本当に心配ならば最初から対応してくれそうな店選ぶでしょ?つか心配ならば息子の方がリードしてオーダー選ぶのが自然でしょ?
認知症の親連れてくるなら、もっと息子はサポートするっしょ。危険なんだから。万が一危険行為や目を離した時に勝手にいなくなった場合店は責任取れないよね。僕が息子ならば危険が一杯な場所には連れて行きたくない。
何でもかんでも受け入れる、というのが素晴らしいサーバーなんだろうか。
最近の接客は一部で「接客の風俗化」と言われていて、お客様の事は一から十までなんでもしてあげましょう。気づいてあげましょう。が独り歩きしてるんじゃないかな。
お客様も店にとって良いお客様であろうと歩み寄って、そこに店側も最高のもてなしをする。という前提があっての話であって
店にマッチしていないお客様にイレギュラー対応を詰め込んで乗り切る。というのはどうなんだろうか。
サーバーは看護師、栄養士、介護もやらねばならないのか。
社会問題を取り上げる事によって、大会の意義を高めようとしているのはわかるのだけど、「サーバーのための、サーバーの未来のための大会」という目的がちょっとぶれてるんじゃない?と感じました。
出題側も毎年変化をしないといけない、というのはわかるのだけどね。
③記念写真
これはイチャモンに近いんだけど、大会後関係者がSNSでUPした集合写真それぞれ最前列に「審査員の皆さん」が並んでいて、その後ろにサーバーが並んでいるものだったんです。一人ならともかく関係者二人が投稿したものが。
①と②で大会に対してモヤッとしていた僕には、それがなんだか全てを象徴するように見えてならなかった。
サーバーが一番輝いて、サーバーが尊重される大会であって欲しいんだよね。
水を差すような投稿だったけど、僕の人生を大きく変えてくれた大会なのであえて愛をこめて。
ともあれ、難問に挑み最高のパフォーマンスを発揮してくださったファイナリストの皆さんおめでとうございます!