先日、某一人焼き肉業態店がTVで放送されて、3分提供の徹底ぶりがTwitterで話題となっていました。お客様の待ち時間を徹底的に減らして満足度と回転率をUPさせたり、お客様への負担をとことんまで減らす努力をしているお店がある一方で、お客様に協力してもらいながら店を継続しているお店もあります。
岩手県にはご支援させてもらっているお店が沢山あるのと同時に、沢山のお店へ訪問していまして、そんな中、宮古市で出会ったお店のお話です。
見るからに老舗感が漂うファサードの居酒屋で、70過ぎくらいの女将さんと高校生らしきアルバイト二人で切り盛りしている30席程度の規模。てきぱきとカウンター内で料理をさばく女将さんがまたシブいです。
まずは生ビールを注文すると、高校生スタッフさんがおもむろに伝票を僕に渡してきて
「最初のご注文はこちらにご記入ください」と手渡してきました。
これはやられました。
ファーストオーダーは決定まで時間がかかりがちで、接客の力で促したりする事で時短を図れますが、そこまで教育するのには結構な時間がかかってしまいます。そこを割り切ってお客様にお願いするこのシステムですが、観察してみると他にも色々と効果がありました。
思わず現場時代を思い出し伝票に注文を書いていると、口頭で注文するよりも真剣にメニューを眺めている事に気づきました。伝票に記入するためにちゃんとしたメニュー名で書こうとしてついつい読み込んでしまい記憶に残ります。そのため(あれ?これ俺注文したっけ?)というありがちな勘違いが減るであろう事は想像に難くないです。
もう一つは、実際に伝票に記入していくとオーダーの組み立てが井之頭五郎のように「まずはどんこのタタキは外せないな。提供まで若干時間かかるだろうからナメコおろしを入れて、、、」とパズルを組み立てるようにバランス良くできる事です。他のテーブルでも「いやいや、ホヤ刺しを入れてるからここは温かいものを注文ですよ」などそこらで戦略会議が行われていました。
そして、真剣にメニューと向き合っていると注文外のメニューも印象に残り、次来た時にはあれを頼もう、という効果もありました。僕も「手作りシュウマイ」を最後まで悩みましたが次回の楽しみにとつい誘導されてしまいました。
ただ、このシステムは取り入れるのには注意が必要でしょう。年配の女将さんが一人で調理を切り盛りしている姿が見えるからこそできるのでしょう。
「女将さん、忙しいところ申し訳無いんだけどビールもうひとついいかな?」なんて言葉が自然と出てくるような、お店とお客様との関係性が許してくれるのだろうと感じます。
不便を体験として楽しんでもらって、お客様と店とが協力して場を作っていくそんな個人店の魅力を改めて感じた宮古の夜でした。